目下ヒダリ向き

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英国紳士 アラン・リックマンの話

眠気の権化、ヒダリです。

春だろうが冬だろうが眠気には子供の頃から勝てません。

 

先日Netflixラブ・アクチュアリーを見つけ、テンションうなぎ上りで早速再生。内容がとても面白いのもあるんですが、出演陣の中に、先日亡くなられたアランリックマンが出演しているのです。配役は会社の部下と浮気未遂をするOH…な役柄。眠たそうなアランの目に上司役が良く似合う。と、思う。

 

あれは確か、高校一年生の頃だろうか。年齢がばれてしまうがまぁ困る事はない。当時一大ブームを巻き起こした児童小説、ハリーポッターと賢者の石が実写映画化されたとあって、テレビやら雑誌やら、あちこちで大々的に宣伝されていた。私の周りでも度々話題に上がっていて、真っ先に友達から見に行こうと誘われた。その時はまだ原作を読んだ事が無かったので、何となく面白そうだという印象しかなかった。当時既にファンタジーは好きだったし、CMで見ただけでも不可思議な世界が目の前をちかちかした。余談ではあるが、ダニエルラドクリフ演じる主人公ハリーポッターの吹き替えは、今やすっかり有名声優となった小野賢章氏だ。

 

ちょっぴり田舎の映画館で、上映時間2時間39分間で、高校一年生の私はすっかり魔法にかけられた。陳腐な例えではあるが、そうとしか言いようがない。壁一面の大きなスクリーンに、所狭しと迫る『魔法』。ファンタジー大好きな高校一年生は頭がくらくらした。トイレを我慢していた事も忘れ、頭の中はハリポタの不可思議な映像が何度も何度も繰り返し流れていた。残念ながら記憶力は良くないので、くまなくとは言えないが。

小さくてふにふにの可愛い子役たち。ふかふかの髭がお茶目で魅力的な校長先生。きりっと背筋の伸びたマクゴナガル先生。動く階段に絵画まで喋る世界。その中で一人、真っ黒いローブを引きずるとにかく怪しい先生がいた。その後私が心血を注ぐ事となる、セブルススネイプ先生だ。とはいえ、第一印象はうさんくさいおじさん程度にしか思っていなかった気がする。それがいつから恋心じみたものになったのか、最早良く分からない。映画を見たその足で、当時なけなしの月5万にも満たないバイト代を手に、発行されている分全ての原作小説を購入した。元々小説はそこまで読むタイプではなく、中学生の頃にスレイヤーズ(これも私の青春だった)を全シリーズ読破していたくらいだった(あの時スレイヤーズをすぺしゃる含め全シリーズ置いていてくれた中学校の図書室に感謝しかない)。

原作の分厚いハードカバー本を前に、私はほんの少しおののいた。分厚いながらもさくさく読めると前評判で聞いていたので、逸る胸を押さえながら、表紙と遊び紙をめくる。それが全ての始まりだった。

 

スネイプ教授は、とにかくハリーを憎んでいた。だけど何故か要所要所でハリーを助け、何かと損な役割をしていて、謎めき過ぎた教授だった。私はまだ家に来たばかりのPCを開き、片っ端からファンサイトを漁った。深い考察をしているサイトは読みふけったし、朝も夜も忘れて本を何度も読んだ。そうこうしているうち行き当たったのが、あの『うさんくさいおじさん』ことアランリックマン氏だった。

当時彼は55歳ほど。30代の設定であるスネイプ教授を演じるにはやや歳が行き過ぎていると言われていた。確かにちょっと、お腹がぽよぽよしてはいた…とはおもう…うむ。だがそれを補って余りあるほど、アランは魅力溢れる俳優だった。小娘だった高校一年生をも叩き落したくらいの。

やがてハリポタシリーズだけでは足りなくなって、過去の出演作を調べに調べて買い漁った。ダイハード、ロビン・フッドいつか晴れた日に、シャンプー台の向こうに、ドグマ。残念ながらラスプーチンは当時どうしても見つからなかった。しがない学生アルバイターのバイト代で足りない分は、クリスマスプレゼントでねだったりして。

 

ダイハードでは悪役のドン。事あるごとに第九を口ずさむのがとても可愛らしいが、ラストはビルの屋上から落下。スローで落ちていく様が中々シュールだった。

ロビンフッドでは中々ヒステリックな悪役で、主役を食ってしまったと今でも囁かれている。「スプーンで心臓を抉り出してやる!」というセリフは、ファン達の間でも合言葉のようになっていた。そして必見なのは、ヒロインの足を自分の足でパーン!!て開いたシーン。まさに( ゚Д゚)な顔をして何度もそのシーンを巻き戻してしまったほどの衝撃。

いつか晴れた日にではブランドン大佐役。とても紳士で美しい役でした。過去に女性と辛い思い出がありながら、マリアンヌに恋をして、右往左往して、というとても良い人。とにかく良い人。紳士的に、でも本人なりに積極的に頑張る。大佐頑張る。つくづく、氏には英国紳士が良く似合うと思います。

シャンプー台のむこうにでは美容師役。ハサミに絡む長い指、びしりと突きつけられるハサミ、そして終盤にちらりと現れる足裏のタトゥが最高。激しいアクションなどはありませんが、全体的にゆったりとした時間が流れ、色気のある氏が見られます。

そして忘れちゃいけないのがドグマ。アランはかの有名なメタトロンという天使役として登場します。これがまたおもしろい。キリスト教を元にしたコメディ映画ですが、その内容はドがつくブラックユーモアたっぷりのお下劣映画。海外では上映禁止運動が起こったほどだそうです。羽根を生やしながらのいつものウンザリ顔がひっくり返るほど素敵なのですが、ズボンをズバッと下ろすアランを見られるのは恐らくこの映画だけだと思います(笑)もちろん天使役なので、作り物のツルッツルな股間なのですが。草生えます。何でも許せる方向けの映画。

 

アランの魅力はその紳士的な所作と演技力ももちろんですが、中でもファンが口を揃えて言うのが彼の美声です。ミルクチョコレートにも例えられる低音ヴァリトンボイス。あのとろけるような囁きでやられた女性は数知れず。

スネイプ教授の吹き替え役を務められたのは土師孝也氏だったので、未だに土師さんの声がテレビからするとガバッと振り返ってしまう癖がつきました。逆にアランの吹き替えを別の方がされているとすっかり違和感が残るように…(笑)

 

そして件のラブアクチュアリーですが、ラブコメディではあるものの、泣き所あり爽快感あり。沢山の主人公がおり、それぞれのラブストーリーが繰り広げられています。登場人物が皆知り合いとして繋がっているのですが、そういった設定が大好き。この人が実はこの人と友達だった、という。その中でアランはデザイン会社のボス。奥さんと子供もいるが、部下である小悪魔ミアのアプローチにうっかり落ちかけてしまう。

奥様との買い物中、大胆にもミアへのクリスマスプレゼントを購入。ラッピングにこだわりまくる店員、早く早くと気が気でないハリー(アラン)、わかりました電光石火で、と言いながら花を散らす店員、トレードマークでもあるしかめっ面でうんざりした様子のハリー。この店員、Mr.ビーンでも有名なローワン・アトキンソンが演じていて、コミカルに磨きがかかっています。結局この後奥様がいらして購入は未遂に終わるのですが、別日に改めて購入したプレゼントを奥様が発見し、自分へのクリスマスプレゼントと勘違いして嬉しそうにする顔が切ない…。二人は後々きちんと仲直りします。

 

アメリカへ旅立ってしまう女の子を追いかけるサムのシーンもとても可愛い。空港でのダッシュシーンは思わず頑張れ!!と呟いてしまう。実はここで潜入の手助けをするのにも、ローワン氏が登場しています。目配せをしてちらりと笑う所を見るに、ハリーとの会計シーンで時間をかけたのもわざとなのか…?と思ってしまう。

見どころ沢山、見終わった後にはほっこりした気持ちが残るので、まだ見ていない方はぜひおすすめします。

 

アランリックマン氏のWikipediaに享年の記載がされたのは2016年。衝撃で、何度も何度もネットニュースを検索して読み漁った。膵臓がん。享年69歳だった。お歳もお歳だったし、自然の摂理には逆らえない。

素晴らしい俳優の誕生に感謝をしつつ、彼の出演作を今日も眺めている。